サイコロ 石川メリヤスマガジンVolume8

タッピ、握りバサミ、ドライバー・・・
人と機械を支える裏方たち

サイコロNo.8 / May 2023
photo_Kenji Tohata,ishikawameriyasu text_Toyo Omiya

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商談の場で手袋や靴下のサンプルをお見せするとき、糸が1本ほつれて飛び出してしまっていることがあります。ニット製品は一筆書きのように糸がつながっているので、下手に切ったりすると伝線や穴あきの原因になりかねません。タッピを使って製品の内側にその糸を引き込むのが常道です。すると、商談の相手から「ニット屋さんらしいですね」と言っていただけたりします。
 
ニット工場で働く私たちにとってタッピはボールペンのように普通に使っている道具です。だけど、外から見ると興味深く珍しいものなのかもしれません。今回は、こうした道具を切り口にして石川メリヤスの生産現場をご案内します。
 
編立の現場では150台の横編み機があり、その大半が常に稼働しています。石川メリヤスは多品種少ロット生産に対応しているため、1日に10台程度は製品の切り替えがあります。また、機械内部の編み針が折れたり曲がったりすることも日常茶飯事です。
 
この機械を操作する社員はマイナスドライバーが必携の道具。度目(編み目の密度のこと)を詰めたり緩めたり、針を支えている金具を外したり取り付けたり。糸を編み針に送り込む天バネの調整には六角レンチが必要です。
 
糸を補充したり製品を検品しながら揃えるのが担当の社員は握りハサミ(糸切りハサミ)を必ず持っています。編み機から出てくる製品は、製品同士や指と指が糸でつながっていることもあるからです。根元で切ってしまうと伝線のもとになりやすいので、つながっている糸の真ん中を切っています。
 
編み立てた製品の縫製や仕上げの工程は近隣の内職さんにお願いしています。届けて回収する「外回り班」が常にはめているのは滑り止め付きの手袋。製品をまとめていれたビニール袋はすべりやすいからです。なお、外回り班の社員は内職さんと同じ作業を自分たちでも行います。ミシンを使うことが多いので、すばやく糸を切れる握りハサミはこの班にも欠かせません。
 
冒頭で紹介したタッピは全社員が持っている小道具です。市販もされていますが、機械用の編み針をストックしている石川メリヤスでは社員が割箸などに針を挟んで各自で作っています。
 
このタッピを最も使うのは、内職さんから回収した製品を最終的に検品して包装し出荷する班の社員たちです。飛び出した糸の根元からタッピの先端を出し、カギに糸をひっかけ、バネの部分(ベラ針)を閉じて引き抜くと、糸はキレイに製品の内側に引き込まれます。
簡単そうに見えますが、やってみると意外と難しい作業です。糸がうまく引っかからなかったり、ベラ針が生地をかんでしまったり。検品班のベテラン社員のようにタッピを高速で扱えるようになるためには熟練が必要です。
 
小道具から見えるニット工場の生産現場、いかがでしたでしょうか。石川メリヤスはすべての製品を自動編み機で作っています。しかし、製品の仕上げにも機械の調整にも人の手は欠かせません。その傍らでは、便利な小道具たちが常に控えて出番を待っています。
 
 
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道具置き場とその使用例
工場の一角にある道具置き場には、編み機の調整や修理に必要など道具が揃っている。六角レンチやスパナ、ペンチなどだ。最もよく使うのはマイナスドライバーで、ポケットに入れて持ち歩いている社員が多い。
 
 
上記の他にも「2023愛知環境賞「優秀賞」を渦japanと共同受賞しました」など掲載しております。
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