サイコロ 石川メリヤスマガジンVolume12
日本製高級デニムの様な産地が誇れる軍手を創る
サイコロNo.12 / August 2025
photo_Consulting Design Tokyo text_Toyo Omiya

使い捨てではなく、愛着がわいて何度でも洗って使い続けたいと思える軍手を開発する―― 。石川メリヤスがこんな決意をしたのは今年初めのことですが、10年以上前から「このままでは三河が作業用手袋(以下、軍手)の産地ではなくなってしまう」という危機感を持ち続けてきました。
石川メリヤスがある愛知県三河地方は「特紡糸」と呼ばれる糸の産地です。明治40年から続く産業で、日本における繊維リサイクル業の元祖と言えます。
今、この特紡糸が絶滅の危機に瀕しています。1990年以降は廃業のスピードが加速しており、三河地方で残る特紡企業は3社ほどです。
廃業の最大の要因は、特紡の価値が見出されていないことです。特紡糸は、戦後繊維産業が活況だった頃に、市場に出せない「B 格」と格付されたワタを糸に紡ぎ、軍手などの原料にして発展した経緯があります。不揃いなB格の原料を人間の知恵と技術で補ってきたのです。
もともと原料がB格であるから、安かろう、悪かろうというイメージが業界内には強く残っています。また、軍手と言えば使い捨ての実用材であり、実際に薄利多売です。
1957年創業の石川メリヤスはこのようなイメージに抗い、特紡糸のポテンシャルを引き出すものづくりを心掛けてきました。ボリューム感があり、ふんわりと着け心地のいい「サイコロ印」のオリジナル軍手は石川メリヤスの揺るぎない原点です。ただし、サイコロ印もやはりプロ向けの実用材であり、「愛着がわいて何度でも洗って使い続けたいと思える軍手」にはなっていません。
大量生産の糸では出せない独特な風合い。特紡糸を使った軍手を改めて見直したとき、私たちの頭に浮かんだのは高級ゾーンの日本製デニムです。これらのデニムで使われる糸と特紡糸には「リング精紡式」という紡績工程
の共通点があります。「空気精紡式」と比べ、生産効率が低くて糸にムラが出るのが特徴です。このムラこそが特紡糸のポテンシャルであり、独特な風合いのある軍手は高級デニムに匹敵する価値を持てるかもしれません。
そのためにはデザインの力が必要です。担当するロジィアプロディーナの久保田千絵さんは、三河地方の西尾日本製高級デニムの様な産地が誇れる軍手を創る市で育ち、東京でファッションブランドを立ち上げてデザイナーとして活動したのち、6 年前に地元へ戻りました。現在「ハレの日の装い」を主軸とし、ウェディングドレスなどのデザインを手掛けています。
これまで2,000種以上の軍手を作り続けてきた石川メリヤスの経験に、グローカルに活動する久保田さんの知見を加え、新たな軍手を作り出しました。軍手=白色の既成概念を打ち破ったカラフルで温かみのある軍手です。実用品としてだけではなく、贈答品としての価値を見出せる仕上がりとなりました。そして、かつて下等なものとされた「B格」という言葉を前向きに再定義し、「三河軍手Ⓑ」と名付けました。日本製デニムのように、産地が誇れる商品に育てていくつもりです。

生地にポリウレタンを編み込みフィット感と保温性を高めて機能性を向上させ
た「三河軍手Ⓑ」7色のカラーネップ糸を使うことで選ぶ楽しさとアナログ感を出している。
上記の他にも、新商品「魚さばき手袋」販売など掲載しております。
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